今から約2500年前に書かれた兵法書『孫子』は今でも絶大な影響力を誇る。
今回は、
『最高の戦略教科書 孫子』
(守屋淳著 日本経済新聞出版社)の中から、試合の流れの作り方に参考になるポイントがあるので紹介しよう。(””で囲んだ部分が引用になります)
”彼を知り、己を知れば、百戦して殆うからず”
”彼を知り、己を知るならば、絶対に敗れる気づかいはない”
相手のチームのことを隅々までスカウティングし、自分のチームの特徴を把握しているならば、絶対に負けることはないということになります。
相手チームに関しては
・相手チームのキーマンは誰か?
・相手の得意プレーは何か?
・相手の得意とするディフェンスは何か?
などなど。
そして自チームに関しては
・キーマンには誰をつけるか?
・得意プレーを止める手立てはあるか?
・オフェンスのパターンで対応できるか?
などなど。
”およそ戦いは、正を以って合し、奇を以って勝つ”
”敵と対峙する時は、「正」すなわち正規の作戦を採用し、敵を破る時は、「奇」すなわち奇襲作戦を採用する。これが一般的な戦い方である”
相手チームとがっぷり四つに組んで、取った取られたの試合をするのであれば正攻法で、勝つことを目的にするのであれば奇襲をかけるということ。
正攻法とは、こちらのこれまで練習してきた方法で戦うということ。もちろんいろいろなことを想定してきたのだから間違っているわけではないが、勝つか負けるかは時の運ということになる。
奇襲とは、「奇」つまり相手の崩れを誘う戦い方のことで、相手の得意を発見し、それを潰していく。そして相手の苦手を発見し、それをついていくという戦い方。勝つことを目的としているので、例えば追い風が非常に強い状況でのオフェンスはまずロングシュートを狙い、失敗しても相手ゴール前の向かい風ディフェンスで相手を追い詰める作戦を取ることになる。
ここで注意したいのが、「正」と「奇」は状況によって入れ替わってしまう可能性があること。
つまり、「奇」だと思って攻めた結果が実は「正」だったり、「奇」だったはずが戦っているうちに修練がすすみ、「正」に変わってしまってしまう場合があるのだ。
特に学生はこの類の成長が著しい。
試合中の観察眼も養いたいところだ。
”善く戦う者は、人を致して人に致されず”
”戦上手は、相手の作戦行動に乗らず、逆に相手をこちらの作戦行動に乗せようとする”
”よく敵人をして自ら至らしむるは、これを利すればなり。よく敵人をして至るを得ざらしむるは、これを害すればなり”
”敵に作戦行動を起こさせるためには、そうすれば利益になると思い込ませなければならない。逆に、作戦行動を思いとどまらせるためには、そうすれば不利益になると思い込ませることだ”
”先ずその愛する所を奪わば、則ち聴かん”
”敵の最も重視している所を奪取することだ。そうすれば、思いのままに敵を振り回すことができる”
この3つの格言は、マンツーの駆け引きとも相通じる所があるだろう。
最後に、最も重要なポイントを。
”卒、いまだ親附(しんぷ)せざるに而(しか)もこれを罰すれば、則ち服せず。服せざれば則ち用い難きなり。卒、親附せるに而も罰行なわれざれば、則ち用うべからざるなり。故にこれに令するに文を以ってし、これを斉(ととの)うるに武を以ってす。これを必取(ひっしゅ)と謂う。令、素より行われて、以ってその民を教うれば、則ち民服す”
”兵士が十分なついてないのに、罰則ばかり適用したのでは、兵士は心服しない。心服しない者は使いにくい。すっかりなついているからといって、過失があっても罰しないなら、これもまた使いこなせない。したがって、兵士に対しては、温情をもって教育するとともに、軍律をもって統制をはからなければならない。普段から軍律の徹底をはかっていれば、兵士はよろこんで命令に従う。”
”つまり、
・愛情や温情による心服
・規律による統制
この二本立てによって部下をまとめなさいというのだ”
自チームのメンバーへの愛情がなければ、メンバーはついてこないし、戦う状態にすらならない。まずは、メンバー一人ひとりへの愛情が最も重要なポイントになる。
規律というのは、チームの目標だけではない。遅刻をしないことや休まないこと、約束事を守るということが重要視したいポイントになる。プレーが上手ければ何をしても許されるチームであれば統制はかからず、チーム一丸となることができずに、相手の攻撃を受け応えることができないだろうし、自分たちのやりたいことも相手の策に阻まれてしまうだろう。
まとめ
これらをまとめると、このようになる。
1、自チームへの愛情
2、小さな約束事(遅刻をしないなど)を守る
3、「正」「奇」のどちらかを選択する
4、観察しながら修正する
いずれも重要なポイントになるが、くれぐれも順番を間違えないように。
もっと詳しく知りたい人は、本の購入をお勧めします。